最近考えてたんだけど、Duolingoってすごいよね。5億人だっけ?とにかく、膨大な数の人たちが毎日あの緑のフクロウに夢中になってる。正直、語学学習アプリってだいたい退屈じゃない?単語カードの暗記とか、つまらない文法練習とか。だいたい2週間で飽きるパターン。
でも、Duolingoは違う。なんでインスタより中毒性があるんだろうって、30日くらいガッツリ分析してみたんだ。そしたら、これ、もう語学アプリのフリした心理学の実験室だった。
【結論】これ、語学アプリじゃなくて「行動心理学」の塊だった
先に言っちゃうと、Duolingoは言語を教えてる会社ってより、行動心理学の会社がたまたま言語を扱ってるって感じ。カジノとか、ソシャゲが人を沼らせるために使ってるテクニックを、全部「教育」のために転用してる。マジで巧妙。
じゃあ、具体的にどんな「仕掛け」があるのか。僕が気づいたヤバいやつをいくつかメモしておく。
仕掛け1:脳をスロットマシンに変える報酬システム
レッスンを一つ終えるたびに、XP(経験値)がもらえるでしょ。これがまず基本。でも、それだけだと予測できちゃって飽きる。すごいのは、たまに「XPブースト」みたいなのがランダムに出てくること。
これ、心理学でいう「変動報酬スケジュール」ってやつ。ギャンブルがやめられないのと同じ原理。次は10XPかも、15XPかも、いや、まさかの50XPブーストが来るかも…?って脳が期待しちゃうから、またやっちゃうんだよね。
ある意味、僕らの脳はDuolingoのスロットマシンを回すために、毎日スペイン語やフランス語の単語をタップしてるようなものかもしれない。
仕掛け2:「得る喜び」より「失う痛み」を2倍使う
これが一番エグい、いや、賢いのかも。「連続記録(Streak)」システムね。
心理学者のダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーが発見したんだけど、人間って「何かを得る喜び」よりも「持っているものを失う痛み」のほうを心理的に2倍も強く感じるらしい。これを「損失回避の法則」って言うんだけど、Duolingoはこれを完璧に利用してる。
100日連続記録って、ただの数字じゃないんだよ。それはもう「私は100日間、毎日学習を続けた人間だ」っていうアイデンティティの一部。それを失うのが、怖い。だから、たとえ5分のレッスンでも、アラームをかけてまでやろうとする。守りたいのは語学力そのものじゃなくて、築き上げてきた「記録」と「自分像」。わかるなぁ、この感じ。
仕掛け3:わざと「足りない」状況を作り出す
レッスン中に間違えると減っていく、あのハートマーク。あれも巧妙な仕掛け。ライフ制だよね。
5つしかないライフがなくなると、レッスンを続けられない。じゃあどうするか?ジェム(アプリ内通貨)を使って回復するか、時間が経つのを待つか、もしくは有料プランに入るか。
これって、わざと「失敗できない」っていう希少性を作り出してるんだ。自分の学習の権利が、制限されたリソースになってる。ミスを避けるためにお金を払う、っていう構図。カジノが「インシュランス」っていう賭けを提供して、損をしないためにお金を払わせるのと心理的には同じ構造。うまいことできてるよなぁ、本当に。
仕掛け4:学習を「社会的な競争」に変えるリーグ戦
人間って、どうしても他人と比べちゃう生き物だからね。Duolingoはこの本能を「リーグ」機能でうまく刺激してる。
毎週、獲得したXPで他のユーザーとランキングを競わされて、上位者は昇格、下位者は降格。こうなるともう、言語を学ぶ目的が「コミュニケーションのため」から「ダイヤモンドリーグから降格しないため」にすり替わっていく。
一人でやる孤独な作業だったはずの学習が、ソーシャルゲームに変わる瞬間。日曜の夜、リーグがリセットされる時間にソワソワする人の気持ち、なんかちょっとわかる気がする。あ、ちなみに、こういうのを「社会的比較理論」って言うらしい。なるほどね。
でもね、面白いのが、日本のユーザーレビューとか見てると、このリーグ戦の競争よりも、むしろ「連続記録」をコツコツ続けること自体に価値を見出してる人が多い気もするんだよね。海外、特にアメリカの「競争して勝つ」みたいなカルチャーと、日本の「継続は力なり」的な価値観の違いが、アプリの使い方にも出てるのかも。…なんて、ちょっと考えすぎか。
【一覧】Duolingoの心理的トリガーまとめ
ここまで出てきたやつを、ちょっと表にしてみようか。頭の整理のために。
| 心理的トリガー | Duolingoでの実装 | ユーザーの感情(本音) |
|---|---|---|
| 変動報酬 | XPブーストがランダムに出る | お、なんかボーナスもらえた!ラッキー!次も出るかも? |
| 損失回避 | 連続記録(Streak)システム | うわ、今日やらないと記録が途切れる…!もったいない! |
| 人工的な希少性 | ライフ(ハート)が5つしかない | 間違えられないプレッシャー。ああ、ハートがもうない…。 |
| 社会的比較 | リーグ戦でのランキング | やばい、このままだと降格する。あと少しXP稼がないと! |
| 進捗の可視化 | スキルツリーが少しずつ埋まっていく | ちょっとずつでも前に進んでる感。達成感がすごい。 |
でも、これって本当に「学習」なのかな?
ここまで褒めてきたけど、もちろん良いことばかりじゃない。この強力な心理的誘導には、副作用もある。
結局、ユーザーは「学習」じゃなくて「ゲーミフィケーション」そのものにハマってしまう危険があるんだよね。「流暢さ」より「連続記録」を追い求め、「理解」より「XP」を最適化してしまう。結果、「Duolingoはうまくなるけど、スペイン語はうまくならない」みたいな皮肉な状況が生まれる。
実際、Duolingoの効果については賛否両論あるみたい。ある研究では「大学で4学期学んだのと同じくらいの読解・リスニング力がつく」なんて結果も出てるけど、逆に「Duolingoでスウェーデン語を学んだ言語学の教授が、現地の初級レベルの試験に落ちた」っていう有名な話もある。要は、ゲーム感覚で続けるきっかけには最高だけど、それだけでペラペラになると思うのはちょっと違うってことだろうね。
他のビジネスがDuolingoから「盗める」アイデア
たとえ語学学習ツールとして完璧じゃなくても、Duolingoの人間心理の理解は完璧。これはどんなビジネスでも応用できると思う。要するに、Duolingoから盗めるアイデアってこういうことかな。
まずは「小さな成功体験」から。いきなりフルマラソンさせちゃダメ。最初はポストに手紙を出しに行くくらいの、絶対に成功できることから始めさせる。小さな成功が勢いを生んで、自信につながる。
次に「意味のあるものを失う恐怖」を作る。お金じゃなくてもいい。ステータス、積み上げた進捗、あるいはアイデンティティ。人は何かを失うことをすごく嫌うから。
報酬は「予測不可能」に。いつも同じご褒美じゃ飽きられる。保証された小さな報酬と、たまに訪れる大きなサプライズを組み合わせるのがミソ。
「社会的なプレッシャー」をデザインする。他人との比較は、どんな叱咤激励よりも人を動かすことがある。競争はエンゲージメントの強力なドライバーになる。
「アイデンティティ」に紐づける。「〇〇しようと頑張ってる人」じゃなくて、「〇〇をやる人」だと本人に思わせる。習慣がアイデンティティの一部になったら、それはもう簡単にはやめられない。
結局、この緑のフクロウが教えてくれる一番大事なことって、「難しいことでも、デザイン次第で人は喜んでやるようになる」ってことなんだろうな。規律を、欲望に変える。これからのサービス設計で、すごく大事な視点だと思う。
…と、ここまで色々考えてみたけど、みんながDuolingo(とか他のアプリでも)で一番ハマった仕組みって何?やっぱりリーグ戦?それとも連続記録?よかったらコメントで教えてほしいな。
